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透明な額

病室に入った時、祖父は遠目にも骨と皮になっていたので内心震えた

私と姉はなんとか笑顔を作って声をかけた
「おじいちゃんハルキだよ お見舞い遅れてごめんね ハルキだよわかる?」

おじいちゃんは焦点があってるのかあってないのか分からない目で
しばらくぼーっとしてたが少し笑って言った

「二人とも器量良しだねえ、おじいちゃんの孫はみんな器量良しだ」

おじいちゃんのひどい褥瘡はもう直らない
おじいちゃんはアルツハイマーで日によっては誰のこともわからない

「おじいちゃん8月で90歳になるんだってね」

おじいちゃんの体は長年波にさらされた流木のようになっていた

「遠くからどうもね」

おじいちゃんは深く息を吸い込んで吐き出しながら声を出した
苦しそうじゃなかったけど目を開けるのさえ何かしらの力を使っているようだった

「おじいちゃん疲れちゃうからもう帰るね また来るからね」

病室から出る時振り返ったらおじいちゃんは右手を上げていた
手首から下の無い、ツルツルに磨かれた流木のような腕だ
もっとしっかり生きないとなあと思った

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by kamutoke | 2007-05-06 13:00 | 日常 | Comments(0)
雑記

by kamutoke
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